3Dタトゥー
「三文小説」T-18
3つの文で綴る、さんぶん小説
『3Dタトゥー』✒T.Kadota
ビルの壁に巨大な猫が出現し、動き回る様に見える立体の映像を見たことがあるが、この前これ同様のものを人の体で見た。
電車に乗っている時、座席の前に立つ半袖の男の腕から、白蛇が這い上がるのが見えたので、私は思わず
「あっ、蛇が、今、白蛇が体に入りませんでしたか?」 と問うと、男は
「あ、これね、大丈夫ですよ、タトゥーですから」
「どうなってるの?」
「よかったら、他にもっと凄いのお見せしますよ」
というので、私は次の駅でその男と一緒に降りて、トイレに行った。
男の背中には、雲の間を上昇する、それはそれは見事な龍が描かれており、と、見る瞬間、龍は男の背中から踊り出て、暫く私と男の頭上を浮遊したかと思うと、また男の背中に戻っていき、そのとても言葉に出来ない光景に唖然としていると、男は言う
「これは特殊な刺青技術と自分の血管のコントロールで出来る技なんですよ、このタトゥーが出来る彫師は、まだ世界で2、3人しかいません、わたしは彫三立(ほりさんりゅう)という日本の彫師に入れてもらいました」
「で、今はその彫師は何処に?」
「さあ、いつも世界中を流離っているので、どこにいるか分かりません、彼に会える人は、それこそ幸運です」 もし、何処かでこの3Dタトゥーを見たなら、彫師、彫三立を思い出して欲しい。